国家資格「情報処理安全確保支援士」とは?

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「情報処理安全確保支援士(Registered Information Security Specialist、略称: RISS)」は、サイバーセキュリティ対策を推進する人材を確保・育成するために創設された、日本の国家資格です。

2017年4月の「情報処理の促進に関する法律」の改正により、それまでの「情報セキュリティスペシャリスト試験」がベースとなり、新たな国家資格として誕生しました。

一言で表すと、「企業や組織のサイバーセキュリティを確保するための、高度な知識と技能を持つ専門家」として国に認められた存在であることを証明する資格です。

 

主な特徴

 

  1. 日本初のセキュリティ国家資格: 経済産業省が所管し、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が試験の実施・登録業務を行っています。
  2. 名称独占資格: 弁護士や公認会計士などと同じ「士業(しぎょう)」の一つです。合格し、IPAに登録手続きを行うことで、「情報処理安全確保支援士」という名称を独占的に使用して業務を行うことができます。登録簿には氏名や事務所所在地などが公示されます。
  3. 知識と技能の継続的な維持(更新制度): 合格して終わりではなく、資格を維持するためには3年に1度の更新(有料の講習の受講)が義務付けられています。これにより、日進月歩で進化するサイバー攻撃の手法や防御技術に対応し、知識の鮮度を保ち続けることが求められます。

 

試験の難易度と内容

 

  • 試験の名称: 情報処理安全確保支援士試験(略称: SC)
  • 難易度: IPAが実施する情報処理技術者試験の中で、最高難易度である「高度情報処理技術者試験(レベル4)」の一つに位置付けられています。合格率は例年15%~20%前後で推移しており、非常に難易度の高い試験です。
  • 試験内容(午前・午後):
    • 午前 I・II(多肢選択式): テクノロジ系(特にネットワーク、セキュリティ基盤技術)、マネジメント系(セキュリティ管理、法務)、ストラテジ系まで、幅広い基礎知識が問われます。
    • 午後 I・II(記述式): 実際のインシデント事例やシステム構成図などを基にした長文の問題が出題されます。セキュリティインシデントの分析、脆弱性の指摘、具体的な対策(ネットワーク構成の変更、ルールの策定など)を、専門家として的確に記述する能力が問われます。

 

期待される役割と業務

 

情報処理安全確保支援士には、以下のような役割が期待されています。
 

  1. セキュリティの企画・設計(コンサルティング): 経営層に対し、セキュリティリスクを説明し、必要な投資や組織体制、セキュリティポリシー(ルール)の策定を主導します。
  2. システムの開発・導入: 新しいシステムを導入する際に、設計段階からセキュリティ要件(セキュアコーディング、暗号化など)を盛り込みます。
  3. 運用・監査: 導入されたシステムが安全に運用されているかを監視・監査(チェック)し、脆弱性を診断します。
  4. インシデント対応(CSIRT): 万が一、サイバー攻撃や情報漏洩が発生した際に、被害拡大の防止、原因究明、復旧作業、再発防止策の策定といった対応の最前線に立ちます。

 

どのような人が目指すべきか?

 

  • セキュリティエンジニア、ネットワークエンジニア
  • 企業のセキュリティ管理者、CSIRT/SOC担当者
  • セキュリティコンサルタント、監査人
  • IT部門のマネージャー、CISO(最高情報セキュリティ責任者)を目指す人

 
この資格は、サイバーセキュリティの専門家として、技術とマネジメントの両面から組織を守る中核的な役割を担う意志のある方にとって、最も信頼性の高い証明の一つとなります。

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