監査人のグローバル標準。「CISA」とは?

CISA(Certified Information Systems Auditor、公認情報システム監査人)は、米国の国際的な専門家団体であるISACA(イサカ、情報システムコントロール協会)が認定する、情報システムの監査および管理に関する国際資格です。
多くのセキュリティ資格が「どう守るか(防御)」や「どう攻撃するか(攻撃)」に焦点を当てるのに対し、CISAは「正しく管理・運用されているか(統制)」を「第三者の視点からチェック(監査)」するための知識とスキルを証明することに特化しています。
情報システム監査の分野において、世界で最も認知度が高く、権威ある資格の一つとされています。
主な特徴
- グローバルスタンダード: 全世界で数十万人の認定保持者がおり、国や業界を問わず通用する「情報システム監査人」のデファクトスタンダード(事実上の標準)資格となっています。
- 「監査人」の視点: CISAの最大の特色は、この「監査人」の視点です。ITシステムやセキュリティ対策が、組織のルール、法律、各種ガイドライン(ISMSなど)に照らして「適切か」「有効か」「準拠しているか」を評価・検証する能力を証明します。
- 実務経験の要求: 試験に合格するだけでなく、認定を受けるためには情報システム監査やセキュリティ、コントロール(統制)に関連する実務経験(通常5年、学歴などで短縮可)が別途必要です。これにより、知識だけでなく実践的な能力も担保されています。
- 継続的な専門能力開発(CPE): 資格を維持するためには、毎年および3年サイクルで所定の継続学習ポイント(CPE)を取得し、報告する必要があります。これにより、監査人としての専門性が最新の状態に保たれます。
試験で問われる5つのドメイン(分野)
CISAの試験は、以下の5つの領域(ドメイン)から構成されており、監査プロセスからITガバナンス、システムの運用管理まで幅広くカバーしています。
- 情報システム監査のプロセス: 監査の計画、実施、報告といった一連の監査手続きに関する知識。
- ITガバナンスとITマネジメント: 組織のIT戦略、リスク管理、情報セキュリティのガバナンス(統治)が適切に機能しているかを評価する知識。
- 情報システムの調達、開発、導入: 新しいシステムが導入される際に、プロジェクト管理や開発プロセスが適切にコントロールされているかを評価する知識。
- 情報システムの運用、保守、サービス管理: 日々のシステム運用やインシデント対応、災害復旧計画(BCP/DR)が適切に管理されているかを評価する知識。
- 情報資産の保護: 機密性・完全性・可用性を守るためのセキュリティ対策(アクセス制御、暗号化、ネットワークセキュリティなど)が有効かを評価する知識。
どのような人が目指すべきか?
- システム監査人、内部監査人
- 監査法人(IT監査部門)で働く人
- セキュリティコンサルタント(特にガバナンス・リスク・コンプライアンス(GRC)領域)
- 企業の内部統制、リスク管理、コンプライアンス部門の担当者
- セキュリティ管理者(監査を受ける側として、監査人の視点を理解したい人)
CISAと他の資格との違い
- CISSP(Certified Information Systems Security Professional)との違い: CISSPがセキュリティを「広く深く、技術からマネジメントまで(守る側・管理する側)」をカバーするのに対し、CISAは「監査する側・評価する側」に軸足があります。
- 情報処理安全確保支援士との違い: 支援士が「日本の国家資格」であり、技術的なインシデント対応能力やセキュアな設計・構築能力に重きを置くのに対し、CISAは「国際資格」であり、監査手続きやITガバナンス・統制の評価に重きを置きます。
CISAは、組織のITシステムとセキュリティ体制の「健康診断」を行う専門家(=監査人)としての信頼性を証明するための、最も強力な資格の一つと言えます。
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