経営層と現場をつなぐ「CISSP」とは?

CISSP (Certified Information Systems Security Professional)は、米国の国際的な非営利団体である (ISC)²(アイエスシー・スクエア)が認定する、情報セキュリティに関する国際資格です。
数あるセキュリティ資格の中でも世界で最も権威があり、グローバルに認知されている「ゴールドスタンダード(最高水準)」とされています。
CISAが「監査」に特化しているのに対し、CISSPは 「組織全体のセキュリティをどう管理し、どう統治(ガバナンス)するか」という、より広範なマネジメントと戦略の視点を問います。その網羅性の高さから「セキュリティ版MBA」と形容されることもあります。
主な特徴
- 圧倒的な網羅性(8ドメイン): CISSPの知識体系(CBK: Common Body of Knowledge)は、技術的なトピック(暗号、ネットワーク)から、物理的なセキュリティ(入退室管理)、法律、リスクマネジメントまで、セキュリティに関わる8つの広範な分野(ドメイン)をカバーしています。
- 厳格な実務経験の要求: 試験に合格するだけでなく、認定を受けるためには、8ドメインのうち2つ以上の分野で合計5年以上の実務経験(フルタイム)があることを証明する必要があります(学歴などで一部短縮可)。 この「実務経験の壁」が、ペーパーテストだけの合格者と一線を画し、資格の価値を担保しています。
- ベンダーニュートラル(中立性): 特定の製品(Palo AltoやCrowdStrikeなど)に依存しない、普遍的なセキュリティの「原則」と「ベストプラクティス」を問います。
- 継続的な学習(CPE)の義務: 資格を維持するためには、3年間で120クレジットの継続学習(CPE)を行い、知識を常に最新の状態にアップデートし続ける必要があります。
CISSPの8ドメイン(CBK)
CISSPは、以下の8分野に関する広範な知識と実践能力を要求します。
- セキュリティとリスクマネジメント: (組織のガバナンス、法律、コンプライアンス、リスク評価)
- 資産のセキュリティ: (情報の分類、データ保護、プライバシー)
- セキュリティのアーキテクチャとエンジニアリング: (システムのセキュアな設計、暗号技術、物理セキュリティ)
- 通信とネットワークのセキュリティ: (ネットワーク構成の保護、セキュアな通信)
- アイデンティティとアクセス管理(IAM): (認証、認可、IDライフサイクル管理)
- セキュリティの評価とテスト: (脆弱性診断、ペネトレーションテスト、監査ログの監視)
- セキュリティの運用: (インシデント対応、災害復旧、フォレンジック)
- ソフトウェア開発セキュリティ: (セキュアなコーディング、開発プロセスのセキュリティ)
どのような人が目指すべきか?
CISSPは「エントリーレベル」の資格ではありません。すでに一定の経験を積んだプロフェッショナルが、次のステップに進むために取得する資格です。
- セキュリティ管理者、マネージャー
- CISO(最高情報セキュリティ責任者)、またはそれを目指す人
- セキュリティコンサルタント、アーキテクト
- 技術的な専門性を持ちつつ、経営的な視点も持ちたいシニアエンジニア
CISSPと他の資格との違い
- CISA(公認情報システム監査人)との違い:
- CISA: 「監査人(チェックする側)」の視点で、IT統制が適切かを評価します。
- CISSP: 「管理者・設計者(作る側・守る側)」の視点で、セキュリティ体制全体を構築・管理します。
- 情報処理安全確保支援士(RISS)との違い:
- RISS: 日本の「国家資格」であり、技術的な側面に強みがあります。
- CISSP: 「国際資格」であり、技術に加えてマネジメント、法律、ガバナンスといった経営層に近い領域をより広くカバーします。
CISSPは、現場の技術者と経営層の「橋渡し役」として、セキュリティリスクをビジネスの言葉に翻訳し、組織全体を動かすために必要な、包括的な知識と経験を証明する最高峰の資格です。
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