「事業を止めない」が最大のミッション。事業会社のセキュリティ担当は、日々何をしているのか?

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事業会社(メーカー、金融、小売、ITサービスなど)のセキュリティ部門の最大のミッションは、「自社のビジネスと情報資産をサイバー攻撃から守り、事業を止めないこと」です。

その業務は、大きく以下の4つの領域に分けられます。


 

1. 🛡️ 守りの「戦略」と「ルール」作り (ガバナンス・リスク管理)

 

組織全体が安全に活動するための「法律」や「司令塔」の役割です。地味ですが最も重要な業務です。
 

  • リスクアセスメント: 「自社にとって最も重要な情報資産は何か?」「どのような攻撃を受ける可能性が高いか?」を評価し、限られた予算をどこに集中させるべきか優先順位をつけます。
  • ポリシー・規程の策定: 全社的なセキュリティルール(例: パスワードポリシー、PCの利用規程、クラウドサービス利用のルール)を作成し、周知徹底します。
  • コンプライアンス対応: Pマーク(プライバシーマーク)やISMS(ISO27001)といった認証の維持・運用を行います。また、個人情報保護法や業界固有の規制(例: 金融庁ガイドライン)を遵守するための体制を整えます。
  • 製品・ベンダーの選定: 前回の記事で紹介したようなEDRやSASEなどのセキュリティ製品を、「自社の課題」に合わせて比較・選定し、導入を主導します。

 

2. 📡 日々の「監視」と「防御」 (セキュリティ運用)

 

策定したルールに基づき、実際にシステムを運用・監視する業務です。技術的な側面が最も強い領域です。
 

  • セキュリティ機器の運用: ファイアウォール、EDR、SASE、IDaaS(Oktaなど)といった導入済みセキュリティ製品が正しく動作しているか設定を管理・最適化します。
  • 脆弱性管理: 社内のサーバーやPC、ソフトウェアに「脆弱性(セキュリティ上の穴)」がないかを定期的にスキャンし、発見された場合は関係部門(例: 情シス)と連携して修正(パッチ適用)を依頼します。
  • ログ監視 (SOC):

    様々な機器から集まるログ(通信記録や操作記録)を監視し、「不審な通信」や「不正アクセスの兆候」がないかを分析します。この業務は専門のSOC(セキュリティ・オペレーション・センター)ベンダーに外部委託し、自社チームは「アラートが上がってきた後の判断」に集中するケースも多いです。

  • アクセス権管理: 「誰が、どのシステムにアクセスできるか」という権限が適切か(例: 退職者のアカウントが残っていないか、不要な権限が付与されていないか)を定期的に棚卸しします。

 

3. 🔥 有事の「対応」 (インシデント・レスポンス)

 

万が一、サイバー攻撃や情報漏洩が発生した際に、最前線で対応する「消防隊」の役割です。CSIRT (Computer Security Incident Response Team) と呼ばれる専門チームが担うことが多いです。
 

  • 検知と分析: 監視チームから上がってきたアラート(例: 「ランサムウェアに感染した疑いのあるPCを発見」)が、本当にインシデント(事故)なのかを即座に判断します。
  • 封じ込めと根絶: 被害を最小限に食い止めるため、感染したPCをネットワークから隔離(封じ込め)します。その後、攻撃の原因を特定し、マルウェアの駆除や侵入経路の遮断(根絶)を行います。
  • 復旧と報告: 安全が確認されたシステムを正常な状態に戻します。同時に、経営層への状況報告や、必要に応じて監督官庁・警察への届出、(情報漏洩があった場合は)顧客への公表準備などを広報・法務部門と連携して行います。

 

4. 👥 人への「啓発」と「訓練」 (教育)

 

「最大の脆弱性は人である」という言葉の通り、従業員のセキュリティ意識を高める業務です。
 

  • セキュリティ教育: 新入社員研修や全社向けの定期的なeラーニングを実施し、最新の脅威(フィッシング詐欺の手口など)や社内ルールを周知します。
  • 標的型攻撃メール訓練: 疑似的な「フィッシングメール」を従業員に送信し、何%の人が開封・クリックしてしまうかを測定します。訓練を通じて「怪しいメールを見分ける力」を養います。
  • 社内ヘルプデスク: 「このメールは開いても安全ですか?」「このSaaS(クラウドサービス)を使いたいのですが」といった、従業員からのセキュリティに関するあらゆる相談窓口となります。

 

まとめ

 

事業会社のセキュリティ業務は、「技術」「法律・ルール」「人」という広範な領域にまたがります。単に製品を導入するだけでなく、経営層と現場をつなぎ、リスクを管理し、インシデントに対応する、非常にダイナミックで重要な役割を担っています。

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