セキュリティ・インフラベンダーの業務とは

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セキュリティ・インフラベンダーとは、Palo Alto Networks、CrowdStrike、Zscaler、Cisco、Fortinetなどに代表される、「セキュリティ製品」や「ネットワーク機器」そのものを開発・製造・販売する企業(メーカー)です。

彼らのミッションは、SIerや事業会社(エンドユーザー)がサイバー攻撃と戦うための「武器(プロダクト)」と、敵の動向を知るための「情報(スレットインテリジェンス)」を創造し、世界中に供給することです。

その業務は、一般的なメーカーとは異なり、「モノ売り」ではなく「インテリジェンス売り」の側面が非常に強いのが特徴です。


 

1. 🔬 中核業務:製品開発(R&D)と脅威リサーチ

 

ベンダーの競争力の源泉は、すべてここにあります。
 

  • 製品開発(R&D): ファイアウォール用の独自チップ(ASIC)を設計したり、EDRの監視エージェントや、SASEの巨大なクラウド基盤といったソフトウェアを開発します。常にライバル企業より高性能・高機能な製品を生み出すための研究開発が日々行われています。
  • スレットインテリジェンス(Threat Intelligence)の生成:これがセキュリティベンダーの「心臓部」です。 Unit 42(Palo Alto)、Talos(Cisco)、Falcon OverWatch(CrowdStrike)といった、世界トップクラスのハッカーや研究者で構成される専門チームを抱えています。 彼らの仕事は、世界中のサイバー攻撃をリアルタイムで観測・分析し、「新しいマルウェアの発見」「攻撃者グループの特定と追跡」「未知の脆弱性(ゼロデイ)の発見」を行うことです。この分析結果(インテリジェンス)が即座に自社製品にフィードバックされ、世界中の顧客が(自動的に)最新の脅威から守られる仕組みを提供します。

 

2. 🧭 戦略立案:プロダクトマネジメント

 

「次に何を作るべきか」「いくらで売るか」を決める、製品の「舵取り役」です。
 

  • マーケット分析: 市場のニーズ(例:「今はXDRがトレンドだ」)や、競合他社の動き(例:「A社が新しいAI機能を出した」)を分析します。
  • ロードマップ策定: R&Dチームと連携し、「3ヶ月後にこの機能を追加する」「1年後に新製品を出す」といった開発計画(ロードマップ)を策定します。
  • プライシング(価格戦略): 製品の価格や、サブスクリプション(年間利用料)のモデルを決定します。

 

3. 🤝 普及と販売:マーケティングとチャネル営業

 

多くの大手ベンダーは、製品を顧客に「直接」売るのではなく、「パートナー(代理店やSIer)」を通じて販売する「チャネルビジネスモデル」を採用しています。
 

  • マーケティング: 自社製品の優位性をアピールするため、大規模なカンファレンスやセミナーの実施、技術的な解説資料(ホワイトペーパー)の作成、Web広告などを行います。
  • チャネル営業(パートナー営業): 自社製品を売ってくれるSIer(「SIerでのセキュリティ業務」の記事における「攻め」の業務)を支援するのが主な仕事です。SIerと勉強会を開いたり、大規模な案件(顧客)の提案を一緒に手伝ったりします。
  • セールスエンジニア(SE / プリセールス): 営業担当者に同行する、高度な技術専門家です。顧客やSIerに対し、製品デモンストレーションや、技術的な質疑応答、導入前の検証(PoC: Proof of Concept)支援を行います。

 

4. 📞 顧客サポート:TAC とプロフェッショナルサービス

 

製品を売った後の「最後の砦」として、顧客を技術的に支援します。
 

  • TAC(テクニカルアシスタンスセンター): 製品を導入した顧客(またはSIer)からの技術的な問い合わせ窓口です。「設定がうまくいかない」「機器が故障した」といったトラブルシューティングを24時間365日体制で受け付けます。
  • プロフェッショナルサービス: ベンダー自身が、非常に高度で大規模な導入プロジェクトを(有償のコンサルティングとして)直接支援することもあります。

 

まとめ

 

セキュリティ・インフラベンダーの業務は、「技術の源流」そのものです。

R&Dと脅威リサーチで生み出した最先端の「製品」と「インテリジェンス」を、パートナーであるSIerを通じて市場に供給し、社会全体のセキュリティレベルを引き上げることが、彼らの最大の役割です。

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