コンサルティングファームでのセキュリティコンサルタントとは

コンサルティングファーム(PwC、DeloitteなどのBig4系、Accentureなどの総合系、マッキンゼーなどの戦略系、NRIセキュアなどの専門系)に所属するセキュリティコンサルタントは、「顧客企業の経営課題」を「セキュリティ」という専門知識で解決するプロフェッショナルです。
SIerが「プロダクト(製品)の導入・構築」という”How”(どう作るか)の実行部隊であるのに対し、コンサルタントは”Why”(なぜそれが必要か)や”What”(何をすべきか)といった、より上流の戦略立案や意思決定を支援する「参謀(アドバイザー)」の役割を担います。
彼らのミッションは、セキュリティを「ITコスト」としてではなく、「ビジネスを成功させるための戦略的投資」として経営層に理解させ、組織全体を変革することにあります。
主な業務領域
コンサルタントの業務は、企業のセキュリティ活動の「上流」から「下流」まで多岐にわたりますが、特に以下の3つの領域で価値を発揮します。
1. 📜 戦略策定とガバナンス構築(GRC)
最もコンサルティングファームらしい、最上流の業務です。CISO(最高情報セキュリティ責任者)や経営層のカウンターパートとなります。
- セキュリティ戦略の策定: 「3〜5年後、会社が目指す姿(例:DXの推進、海外展開)に対し、どのようなセキュリティ体制が必要か」という中長期ロードマップを策定します。
- リスクアセスメントと管理: 顧客のビジネスを分析し、「最も守るべき情報資産は何か」「最大のリスクは何か(例:ランサムウェア、内部不正)」を特定・評価し、対策の優先順位付けを支援します。
- ガバナンス・ポリシー策定: 全社的なセキュリティルール(情報セキュリティポリシー)を策定し、それを遵守させるための組織体制(例:CSIRTの設立)を構築します。
- コンプライアンス対応: ISMS(ISO27001)、NIST CSF(米国のセキュリティフレームワーク)、FISC(金融)、PCI DSS(クレジットカード)といった国内外の規制や基準に準拠するための体制構築を支援します。
2. 🛡️ テクニカル・アセスメントとアーキテクチャ設計
戦略を具体的な「技術」に落とし込む業務です。
- 脆弱性診断・ペネトレーションテスト: 専門の技術チーム(レッドチーム)が、顧客のシステムに疑似的なサイバー攻撃(ハッキング)を仕掛け、弱点(脆弱性)を洗い出し、具体的な改善策を報告します。
- セキュリティ・アーキテクチャ設計: 「ゼロトラストを実現したい」といった顧客の要望に対し、特定の製品に依存しない中立的な立場で、理想的なシステム構成図(アーキテクチャ)を描きます。
- ソリューション選定支援(PMO): EDRやSASEなどの製品を導入する際に、複数ベンダーの製品を公平に比較・評価(RFP作成支援)し、顧客に最適なソリューション選定を助言します。また、SIerが実施する導入プロジェクト全体を、顧客側の立場で管理(PMO)します。
3. 🚨 インシデント対応(IR)とフォレンジック
実際にサイバー攻撃(ランサムウェア感染、情報漏洩など)が発生した際の「火消し役」です。
- 緊急インシデント対応: インシデント発生の通報を受け、即座に現場に駆けつけます。被害の封じ込め、攻撃者の特定、ネットワークの遮断など、緊急対応を指揮します。
- デジタル・フォレンジック: 攻撃を受けたPCやサーバーのログ、ハードディスクを解析し、「いつ、誰が、どうやって侵入し、何を盗んだのか」という被害の全容を法的な証拠として突き止めます。
- 再発防止策の策定: フォレンジックで判明した侵入経路や原因に基づき、二度と同じ攻撃を受けないための恒久的な対策を提言します。
まとめ
コンサルティングファームのセキュリティコンサルタントは、「客観的な第三者」かつ「高度な専門家」という独自のポジションから、企業のセキュリティを根本的に改善する仕事です。
SIerやベンダーのように特定の「モノ」を持たないため、「知識」「経験」「論理的思考力」「コミュニケーション能力(特に経営層への説明能力)」そのものが商品となります。
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