セキュリティコンサルタントとは

サイバー攻撃が経営を揺るがす重大なリスクとなった現代において、「セキュリティコンサルタント」の市場価値が急速に高まっています。
しかし、「具体的に何をする人なのか?」「SIerや社内SEと何が違うのか?」を明確に説明できる人は少ないかもしれません。
この記事では、セキュリティコンサルタントという専門職について、その役割、具体的な仕事内容、必要なスキルや資格までを徹底的に解説します。
目次
1. セキュリティコンサルタントとは?
セキュリティコンサルタントとは、企業の経営課題やビジネスリスクに対し、セキュリティの専門家という立場で助言・支援(コンサルティング)を行うプロフェッショナルです。
最大のミッションは、セキュリティを単なる「ITコスト」ではなく、「ビジネスを守り、成長させるための戦略的投資」として経営層に認識させ、組織全体を変革へと導くことです。
ITシステムの構築・導入(How)を担うSIerとは異なり、コンサルタントは「なぜそれが必要か(Why)」「何をすべきか(What)」という、より上流の戦略立案や意思決定を支援する「経営の参謀(アドバイザー)」の役割を担います。
2. SIerや社内セキュリティ担当との決定的な違い
同じ「セキュリティ」に関わる職種でも、その立ち位置とミッションは大きく異なります。
| 職種 | 立ち位置 | 主なミッション |
|---|---|---|
| セキュリティ コンサルタント | 経営の参謀(客観的な第三者) | 戦略立案と意思決定支援。「何をすべきか」を定義する。 |
| SIer (ベンダー) | 実行部隊(構築のプロ) | コンサルが定義した要件に基づき、製品を導入・構築する。 |
| 事業会社 (社内担当) | 自社の守護神(当事者) | 自社のシステムと情報を守るため、 日々の運用・監視・対応を行う。 |
セキュリティコンサルタントの価値は、特定の製品(モノ)を持たない「中立性」と、経営課題を解決に導く「戦略的視点」にあります。
3. セキュリティコンサルタントの具体的な仕事内容
業務はファーム(PwC、Deloitte、NRIセキュアなど)によっても異なりますが、主に以下の3つの領域に大別されます。
① 戦略策定・ガバナンス構築(GRC)
最もコンサルタントらしい最上流の業務です。CISO(最高情報セキュリティ責任者)や経営企画室がカウンターパートになります。
- セキュリティ中長期戦略の策定: 企業の3〜5年後のビジネスプランに基づき、セキュリティのロードマップを描きます。
- リスクアセスメント: 「最大のリスクは何か」「守るべき資産は何か」を評価し、対策の優先順位をつけます。
- ガバナンス・ポリシー策定: 全社的なセキュリティ規程(ルールブック)を作成し、それを守るための組織体制(例:CSIRTの設立)を設計します。
- コンプライアンス対応: ISMS(ISO27001)、 NIST CSF、 FISC(金融)、 PCI DSS(カード)といった国内外の規制・基準に準拠するための体制構築を支援します。
② テクニカル・アセスメント
技術的な専門性を活かし、システムの「弱点」を洗い出します。
- 脆弱性診断・ペネトレーションテスト: 専門の技術チーム(レッドチーム)が、顧客のシステムに疑似的なサイバー攻撃(ハッキング)を仕掛け、セキュリティホールを発見・報告します。
- セキュリティ・アーキテクチャ設計: 「ゼロトラストを実現したい」といった要望に対し、中立的な立場で理想的なシステム構成図(設計図)を描きます。
- ソリューション選定支援: 顧客側の立場で、EDRやSASEなどの製品を公平に比較・評価し、最適な選定を支援します。
③ インシデント対応(IR)とフォレンジック
実際にサイバー攻撃(ランサムウェア感染など)が発生した際の「火消し役」です。
- 緊急インシデント対応: 被害の封じ込め、ネットワークの遮断など、緊急対応を現場で指揮します。
- デジタル・フォレンジック: PCやサーバーのログを解析し、「いつ、誰が、どう侵入し、何を盗んだのか」を法的な証拠レベルで突き止めます。
- 再発防止策の策定: 判明した原因に基づき、二度と同じ攻撃を受けないための恒久対策を提言します。
4. セキュリティコンサルタントに必要なスキルと資格
セキュリティコンサルタントは、「技術」と「経営」の橋渡し役であるため、多岐にわたるスキルが求められます。
必要なスキル
- 高度なセキュリティ専門知識:ネットワーク、OS、暗号、クラウド(AWS/Azure)、各種規制(個人情報保護法など)に関する広範かつ深い知識。
- 論理的思考力(ロジカルシンキング):複雑な事象を整理し、問題の本質を突き止め、筋道の通った解決策を導き出す能力。
- コミュニケーション能力(特に説明能力):難解な技術リスクを、「経営層が理解できる言葉(例:ビジネスインパクト、金額的損失)」に翻訳して説明し、意思決定(投資)を促す能力。
- ドキュメンテーション能力:戦略、報告書、規程類など、論理的で分かりやすい「成果物」を作成する高度なライティング能力。
有効な資格
資格が必須ではありませんが、知識と信頼性を証明する上で非常に有効です。
- CISSP(Certified Information Systems Security Professional):セキュリティ界の「MBA」とも呼ばれる最高峰の国際資格です。技術からマネジメント、法律まで網羅的にカバーし、特に戦略・ガバナンス領域で絶大な信頼を得られます。
- CISA(Certified Information Systems Auditor):公認情報システム監査人と呼ばれる国際資格です。「監査」「統制」の視点に強く、ガバナンスやコンプライアンス系の業務に直結します。
- 情報処理安全確保支援士(RISS):日本唯一のセキュリティ国家資格です。国内での信頼性が抜群に高いです。
- その他: CompTIA Security+、CEH(認定ホワイトハッカー)、クラウド系資格(AWS/Azure)などがあります。
まとめ
セキュリティコンサルタントは、技術的なバックグラウンドを活かしつつ、より上流の「戦略立案」や「経営課題の解決」に直接携わることができる、非常に挑戦的でやりがいのある仕事です。
「モノ作り(構築)」から「仕組み作り(戦略)」へキャリアチェンジしたいエンジニアや、社会の安全を守る最前線で活躍したい方にとって、最適なキャリアパスの一つと言えるでしょう。
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