ベクターHD、Cornami製AIサーバーを導入

― 完全準同型暗号に対応、省電力・高性能で“日本発AIインフラ”を構築へ ―

ベクターホールディングス(ベクターHD)は12月3日、米Cornami(コーナミ)製のAIサーバーを導入すると発表した。高い省電力性能と、データを暗号化したまま処理できる「完全準同型暗号(FHE)」への対応を特徴とし、日本発のAI社会基盤の構築に乗り出す。


■ 従来型を超える非ノイマン型アーキテクチャ

CornamiのAIサーバーは、従来のノイマン型ではなく非ノイマン型の大規模並列処理アーキテクチャを採用。これにより、大規模言語モデル(LLM)の処理ではNVIDIA H100搭載サーバーを上回る性能を発揮できるとしている。

さらに、電力効率を重視した設計により、消費電力を最大10分の1に抑える省電力性能も備える。


■ データを“暗号化したまま処理”するFHEを実装

Cornamiの共同創業者でCEOのGordon Cambell(ゴードン・キャンベル)氏は、FHE技術の価値を次のように説明する。

「FHEは極めて高い負荷がかかる技術だが、私たちはそれを実行できる企業の1つ。データを暗号化したままAI分析や計算ができ、結果も暗号化されたまま返送されるため、復号時のリスクを排除できる」

医療・金融・公共など高度な機密性を求められる分野での利用が期待される。


■「AIを使っても国内にノウハウが残らない」現状への危機感

ベクターHD代表取締役社長の轟木一博氏は、日本のAI活用状況について次のように指摘する。

「多くのデータセンターは海外企業に依存しており、AIを使っていても自ら動かせていない。ノウハウや利益は海外に流出し、このままでは日本はAIで下請けのような立場になりかねない」

一方で、都市部の電力不足やGPUサーバーの調達難といった国内課題を挙げつつ、
「信頼性・品質・安全性は日本の強み。今こそ世界のAIに追いつくチャンス」
と強調した。


■ ミドクラ・アデコと連携、実証から人材育成まで推進

ベクターHDは今後、Cornami製サーバーを活用し、ミドクラと連携した実証実験を開始する予定だ。演算性能、FHEを活用したAI推論の有効性、商用運用の安定性などを検証する。

また、人材会社アデコと協力し、データアノテーションやAI運用監視などの人材育成にも取り組む。

引用元記事:https://japan.zdnet.com/article/35241252/