米中、TikTok米国支配権移行で枠組み合意 – データ主権とセキュリティ確保が焦点

2025年9月16日、米国政府と中国政府は、動画アプリ「TikTok」の米国事業を米国企業の支配下に移行する枠組みで合意したと発表しました。

安全保障上の背景

TikTokの親会社ByteDanceに対する米国の安全保障上の懸念は2020年に顕在化。2024年にはバイデン前大統領が、米政府が承認する買い手への売却を一定期間内に求める法律に署名し、応じない場合は米国内での全面禁止が可能となる制度が整えられていました。トランプ前大統領も就任後、TikTokを利用しつつ、中国側との協議を継続してきました。今回の合意は、この問題に現実的な収束点をもたらすものです。

合意内容

合意の核心は「米国側の支配構造への移行」であり、商業条件の詳細は当事者間で既にまとまっていますが公開されていません。今後は米中首脳間での最終調整後、規制当局への届出や承認手続きに進む予定です。

未解決の論点としては、買収コンソーシアムの構成や出資比率、プラットフォームの推薦アルゴリズムの扱い(譲渡、ライセンス供与、ブラックボックス運用)などが残されています。また、中国側の技術輸出管理に抵触しない枠組み設計や、米国内でのデータ保管、独立監査の導入、政府関与の遮断、日常運用の透明性確保といった運用面のガバナンスも今後具体化が求められる領域です。

買い手候補

2020年に浮上した「TikTok Global」構想では、米企業が関与する整理案が検討されました。オラクルは2022年以降、米国データのクラウド受託を行っており、資金力や規制対応力の観点から実務設計を主導しやすい立場にあります。一方、アルゴリズムを除く資産取得を志向する投資グループも存在しますが、代替アルゴリズムの再構築には時間と費用がかかる点が課題です。

米国のセキュリティ上の懸念

米国側は以下を重視しています。

  • 国内ユーザー(推定1.35〜1.7億人)の大規模データへのアクセス

  • 推薦アルゴリズムによる世論操作の可能性(他国での選挙介入事例も確認済み)

  • 端末・アプリの脆弱性を通じた侵入リスク

中国の国家安全関連法制が民間企業へのデータ提供を事実上強制できる点も懸念されており、今回の枠組みは米国内でのデータ主権確保と独立監視の制度的担保を狙ったものとみられます。

引用元記事:https://rocket-boys.co.jp/security-measures-lab/tiktok-us-sale-agreement-china-us/