NIST、軽量暗号「Ascon」を正式標準化 IoTや医療機器のセキュリティを革新

米国立標準技術研究所(NIST)は2025年8月13日、軽量暗号化アルゴリズム「Ascon」ファミリーを正式な標準規格「NIST SP 800-232」として発表した。これは、IoTデバイスや医療インプラントなど、リソースが限られた小型電子機器のセキュリティを大幅に向上させる画期的な一歩となる。
軽量暗号の必要性
現代のIoTデバイスは、計算能力やメモリ、バッテリーが限られており、従来のAESやSHA-3といった標準暗号の実装は困難だった。このため多くの小型デバイスでは十分な暗号化が施されず、セキュリティ上の脆弱性が放置されてきた。軽量暗号は、少ないリソースで十分な安全性を確保できるよう設計されており、今回の標準化は世界的な「ものさし」を提供する点で意義深い。
Asconの選定経緯
Asconは2014年にオーストリア・グラーツ工科大学などの共同研究で開発され、2019年の暗号コンペ「CAESAR」で軽量暗号部門の最優秀賞を獲得。NISTによる標準化プロセスでは、57の候補アルゴリズムから透明性の高い評価を経て選定された。Asconファミリーの4つの派生版が標準として採用され、IoTデバイスの多様な課題に対応できるよう設計されている。
NIST SP 800-232の主要アルゴリズム
- ASCON-128 AEAD:暗号化と認証を同時に行い、データの改ざんや偽装を防止。サイドチャネル攻撃への耐性も容易に確保できる。
- ASCON-Hash 256:軽量ハッシュ関数。データの完全性検証やファームウェア更新の安全性確認に利用可能。
- ASCON-XOF 128 / CXOF 128:出力長を自由に設定できる拡張ハッシュ関数。デバイス固有ラベルにより衝突リスクを低減。
産業界への影響
Ascon標準の採用により、スマートホーム機器、医療インプラント、自動車センサーなど、これまでセキュリティが後回しにされがちだった小型デバイスでも、堅牢な暗号化が可能になる。デバイスメーカーは実装の容易さと安全性向上の両立が可能となり、IoTサービスやビジネスモデルの拡張にも寄与する。
今後の展望
NISTは標準を将来的なニーズに対応できる拡張性を持たせており、追加機能の検討も進める。また、ポスト量子暗号(PQC)の標準化と併せ、現代と未来の脅威に対応する包括的なセキュリティ基盤を構築する方針だ。Asconは、IoTデバイスのセキュリティを根本から変え、デジタル社会全体の信頼性向上に貢献することが期待される。
引用元記事:https://xenospectrum.com/nist-finalizes-ascon-lightweight-cryptography-standard-iot-security/#google_vignette



