地域金融機関の信頼失墜 いわき信組不正は全容解明と責任追及を

地域経済を支える信用組合として、あってはならない悪質な不正行為が明らかになった。いわき信用組合(福島県いわき市)と金融庁は、全容解明と再発防止策の徹底を急がねばならない。
第三者委員会が5月末に公表した報告書によると、いわき信組は2004年から約20年にわたり、大口取引先への不正融資を繰り返し、組織的に隠蔽していた。架空会社を使った迂回融資や、預金者名義を無断使用した偽口座開設など、金融機関としてあるまじき行為が常態化していた。
不正の件数は1293件、金額にして累計247億円。融資残高が約1200億円という規模を考えれば、組織の根幹が損なわれていたといえる。法令順守意識の欠如は深刻であり、地域の信頼を裏切る行為だ。
問題の根底には、20年にわたり会長を務めた元経営者の専横と、それを許す企業風土があった。物言えぬ環境が不正の温床となり、統治不全に拍車をかけたことは明白だ。
加えて、2012年には東日本大震災後の経済再建支援として、国が175億円の公的資金を注入していた。にもかかわらず、いわき信組はこの資金により体力を得たうえで、不正融資の損失を処理していた。公金を不正の“隠れ蓑”に利用した構図は、極めて悪質である。
旧経営陣の協力も不十分だった。第三者委員会の調査に対し、パソコンを破壊し、資料提出を拒むなど、真相解明を妨げた。これを受け、刷新された現経営陣は弁護士らによる特別調査委員会を設置。今後、損害賠償請求や刑事告訴も視野に入れているという。遅きに失した感は否めないが、民事・刑事両面からの徹底追及が不可欠だ。
信用組合は全国に約140あり、非営利の協同組織として地域と密接に連携している。預金残高は約24兆円、貸出金は約14兆円にのぼり、地域金融の一翼を担う重要な存在だ。
その中で起きた今回の事件は、全国の信組に共通するリスクを浮き彫りにした。特に、いわき信組に対し公的資金を投入しながら、不正を見逃してきた金融庁の監督責任は重い。今こそ、全信用組合に対する監督体制の総点検を行い、再発防止と信頼回復に取り組まねばならない。
引用元記事:https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20250712-567-OYT1T50177



