NTT、熟練者の判断フローを約9割の精度で見える化するAI技術を開発

― 問い合わせ対応の高度化・自動化へ道筋
**日本電信電話株式会社(NTT)**は、2025年7月27日、コールセンターやセキュリティ事故対応などにおける問い合わせ履歴から、熟練者の判断プロセスを約90%の精度で「見える化」するAI技術を開発したと発表しました。
この技術により、経験豊富なオペレーターの思考フローを再現し、新人でも熟練者と同等レベルの対応が可能になることが期待されています。
目次
■ 技術概要:LLMを活用し、判断プロセスを構造化・可視化
開発された技術は、以下3つのステップから成り立っています。
▼ ステップ1:問い合わせ履歴から「質問」と「提案」を抽出・統合
大規模言語モデル(LLM)を活用して、履歴中の「質問」と「提案」を抽出し、類似内容を統合して「統合質問リスト」「統合提案リスト」を生成。
▼ ステップ2:対話の流れを分析・フロー構造化
履歴上のやり取りが、どの「質問」「提案」に該当するかをLLMに判断させ、質問から提案までのプロセスを構造化フロー(シナリオ)として変換。
▼ ステップ3:頻出パターンから判断ツリーを生成
構造化された各対話を分析し、「質問/提案」同士の遷移頻度を計測。頻度の高い遷移順に基づいて**判断フローチャート(ツリー構造)**を自動生成。
■ 実験結果:FloDialデータセットで約9割の再現精度を確認
技術の有効性は、自然言語処理の評価で広く用いられている**公開データセット「FloDial」**を用いて検証されました。FloDialに含まれる問い合わせ履歴から自動生成したフローチャートは、正解フローチャートのツリー構造を約90%の精度で再現。
これにより、自由な自然言語によるやり取りからでも、高い視認性と解釈性を備えた熟練者の判断フローの抽出が可能であることが実証されました。
■ 今後の展望:ノウハウ継承から自動応答システム構築へ
NTTは今後、実業務の履歴データを用いたさらなる検証・精度向上を進めるとしています。実務上では、
- 不完全な対話(情報の欠落・飛躍)への対応
- 自動応答システムへの応用
などを視野に入れ、業務効率化とノウハウ継承の両立を目指しています。
また、見える化された判断フローは、人手での修正も容易で、AIによる自動応答の透明性・信頼性を高める基盤となるとしています。これにより、「なぜその提案や判断に至ったか」という説明可能なAI対応が実現し、問い合わせ対応業務の自動化と安心の両立が可能になります。
■ 国際学会にも採録
この研究成果は、**国際自然言語処理学会「ACL 2025(The 63rd Annual Meeting of the Association for Computational Linguistics)」**において、Findingsとして正式に採録されたことも併せて発表されました。
引用元記事:https://enterprisezine.jp/news/detail/22494



