セキュリティ企業PCA、Bluetoothスタック「OpenSynergy BlueSDK」の深刻脆弱性「PerfektBlue」を公表

~自動車インフォテインメントシステムが1クリックでリモート攻撃の危険に~

2025年7月7日、セキュリティ企業のPCAは、組み込みBluetoothスタック「OpenSynergy BlueSDK」に複数の深刻な脆弱性が存在すると発表した。これら4件の脆弱性(CVE-2024-45431~45434)を組み合わせた攻撃チェーン「PerfektBlue」として公表し、世界中の自動車メーカーを含む多くの業界に影響を及ぼす可能性があることを警告した。

PerfektBlueとは

「PerfektBlue」は、OpenSynergy社が提供する車載向けBluetoothスタック「BlueSDK」に内在する脆弱性を悪用し、条件を満たすと攻撃者が対象デバイス上でリモートから任意のコード実行(RCE)を行える攻撃手法である。特に車載インフォテインメントシステム(IVI)で広く採用されており、Mercedes-Benz、Volkswagen、Skodaなど主要自動車メーカーのシステムが影響を受けている。

影響範囲

  • Mercedes-Benz
    対象機種:NTG6シリーズ、NTG7シリーズ(推定)
    Bluetoothプロセスを通じたリモートコード実行が可能で、車載OSのユーザー権限を攻撃者に奪われるリスクがある。
  • Volkswagen
    対象機種:MEB ICAS3(IDシリーズ等)
    ファームウェアの特定バージョンにてBluetooth接続経由でのシステム侵入が確認されている。
  • Skoda
    対象機種:MIB3(Skoda Superbなど一部Volkswagenモデル含む)
    リモートシェルの取得に成功しており、音声データや位置情報、連絡先への不正アクセスが懸念される。

PCAはさらに未公表のOEMを含め、少なくとも4社以上のメーカー製品が影響を受ける可能性があると指摘。自動車産業の長大なサプライチェーンにより、パッチ適用まで時間を要する可能性もあるとしている。

攻撃のリスクと被害可能性

攻撃者がIVIシステムへ侵入すると、以下の被害が想定される。

  • GPS位置情報の追跡
  • 車内音声の盗聴
  • ユーザー連絡先や通話履歴の窃取
  • 他車載ECUへの横展開(ラテラルムーブメント)

技術的な詳細

OpenSynergy BlueSDKはBluetooth ClassicおよびLow Energyの複数プロファイル(A2DP、AVRCP、PBAP、GATT等)を実装する。報告された脆弱性のうち、特に重大度が高いのはAVRCPのUse-After-Free(CVE-2024-45434、CVSSスコア8.0)であり、その他3件も中~低程度のスコアながら組み合わせることでリモート攻撃が成立する。

また、多くの実装では「Just Works」ペアリングモードやペアリング制限が緩いことから、ユーザーの最低限の操作(1クリック)で攻撃が成立しうる点が問題視されている。

推奨対応

利用者向け

  • 最新のファームウェア適用状況を確認し、未提供の場合はBluetooth機能の無効化を検討する。
  • 不審なBluetooth通信や動作に注意を払う。

メーカー向け

  • 自社製品にBlueSDKが利用されているか早急に確認する。
  • PCAと連携し、脆弱性の検証および修正パッチの適用を推進する。
  • BlueSDKの設定やバージョンに応じたセキュリティ対策を見直す。

引用元記事:https://rocket-boys.co.jp/security-measures-lab/bluetooth-vulnerability-allows-car-intrusion-eavesdropping-and-location-tracking-on-multiple-manufacturer-vehicles/